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医師人生 終わりなき挑戦

医師人生 終わりなき挑戦

2年次研修医 大倉 裕矢

2023年4月 快晴。大阪南部、関西国際空港のふもとに位置するりんくう総合医療センター。天王寺に6年間下宿していた私にとっては少し田舎か、いいやどこか故郷の和歌山と重なる街並みの泉佐野。心地よく吹く潮風に背中を押されるように私の医師人生は海岸沿いで幕を開けた。 

2月5日に医師国家試験が終了し、卒業旅行や新生活の準備など予定を詰め込んでいると2ヶ月弱の学生最後のモラトリアムは一瞬で過ぎ去っていった。 病院勤務が始まると、どこかお客様気分であった学生時代とは打って変わり、何をするにも"責任"の2文字が重くのしかかる毎日に慣れるのはかなりの時間を要した。当初は帰宅するや否やベッドで全く動けないほど精神的に疲労していたのを記憶している。 それからというものは今日に至るまで患者様との出会いそして時に別れを経験し、自分自身の知識、技術の未熟さに絶望する暇もなく過ぎていく日々の中で、得られる小さな成功体験ひとつひとつを糧に勉強を続ける毎日である。 

そんな中、今回のリレーコラムの執筆にあたり思い返せば医学生時代は私も将来への期待を抱きながらも漠然とした不安感を感じることが多かったと記憶している。 

若輩者ながらも一足先にその未知へ飛び込んだ者としてはそれらを克服するためには日々の業務を大小関係なくひとつひとつを丁寧にこなすことが地道だが一番の近道ではないかと考えている。一見すると成長していると感じづらいことでも継続することで月単位や年単位で振り返ると信じられないほど成長していることが多々ある。

とはいえ正直に言うと現時点では日常生活で将来への不安などマイナスの感情になることの方が多い。特に研修医2年目は来年度からの専攻科選択という大きな岐路に立たされており、もう後には引き下がれないというやり場のない焦燥感に苛まれることもある。 

そんな時私は時間がある際、車を走らせ原点であるりんくう海岸からの関西国際空港の景色を見に行くことがある。心地よい波音を聞きながら、目まぐるしく離発着をしている飛行機とその背景に空と海2色の青に彩られた絶景を見ていると気持ちがリセットされまた自分に前を向かせてくれる。読者の皆様も是非一度ご覧いただきたい。 

最後になるが、おそらく未来への不安は今後も尽きることはないだろう。しかし不安は自分自身への期待の裏返しの感情でもある。私の医師人生は始まったばかり。あっという間に大空へと消えていくあの飛行機のようにどこまでも進んでいこう。

りんくう夕日写真